オフィスを新たに立ち上げたり、改装したりする際には「内装工事」を行いますが、その内容によって業務効率や快適性は大きく左右されます。内装工事にはさまざまな種類があり、目的や施設の状態などによって適切な工事を行う必要があります。
本記事では、オフィス内装工事の主な種類や費用の相場、工事の進め方、業者の選び方について、実際の事例も交えながら解説します。
オフィス内装工事の6つの種類

オフィス内装工事は契約上(誰が施工・負担するか)の区分では、A工事、B工事、C工事の3つに分類されることがあります。ただし、今回は上記の区分によらず、工事作業の内容ごとに整理してご紹介します。
建築工事
建築工事は、オフィス空間の「骨格」を形成する最も基本的な内装工事です。具体的には壁、床、天井などに関わる以下のような工事が該当します。
工事名 | 概要 |
---|---|
仮設工事 | 本格的な工事の前に行う工事。他のエリアやテナント等に埃や迷惑が掛からないように工事部分を取り囲む工事 |
軽鉄工事・ボード工事 | 壁や天井の下地をつくる工事であり、レイアウトや空間構成に大きく関わる部分 |
内装仕上げ工事 | クロスや床材、タイルカーペットなどの仕上げ材を施工する。デザイン性や快適性に直結する重要な工程 |
塗装工事 | 壁面や天井の塗装を行い、空間の印象を整える。企業のイメージやブランドカラーに合わせたデザインも可能 |
間仕切り工事 | 会議室や執務スペースを区切るパーティションの設置など、ゾーニングに関わる工事 |
OAフロア導入工事 | 床下に配線を収納できるようにすることで、オフィスの美観と利便性を向上させる |
家具工事 | 家具自体を据え付ける、または家具の材料を現場で加工・組み立てて据え付ける工事 |
電気工事
電気工事は、オフィス内で使用するすべての機器に電力を供給するために必要なインフラ整備です。主な内容は以下の通りです。これらは、快適かつトラブルの少ない業務環境を構築するために重要な工事のひとつです。
工事名 | 概要 |
---|---|
電源・コンセントの設置 | パソコン、コピー機、電話などの電源を確保 |
照明器具の設置・移設 | 執務環境に適した明るさや位置に調整 |
配線工事 | 安全かつ効率的に電力を分配するための作業 |
空調・衛生工事
オフィス内の温度や空気環境、そして水回り全般の機能性を整える工事です。主に以下の工事が含まれ、衛生的で働きやすいオフィスを構築するために欠かせない工事です。
工事名 | 概要 |
---|---|
空調設備工事 | エアコン、換気扇、空調ダクトなどの設置・移設を行う。オフィスの快適性に直結する |
給排水設備工事 | 給排水の配管や排気ダクトなどの整備を行う |
衛生設備工事 | トイレ、給湯室、キッチンなどの設備を設置。従業員の快適な職場環境を支える要素 |
防災工事
火災や地震などの災害に備えた工事です。主に以下の設備が対象となります。
実施事項 | 概要 |
---|---|
火災報知器・スプリンクラー・消火栓 | 火災発生時に迅速に初期対応できる設備を整える |
誘導灯・非常灯の設置 | 避難経路の明示や停電時の安全確保のために重要 |
これらの工事は、建築基準法や消防法などの法令に基づいて設計・施工する必要があり、消防署や自治体の建築指導課に相談することも選択肢に入ります。法的な義務と安全性の両面から極めて重要です。
防犯工事
オフィスの情報資産や従業員を守るための防犯設備の工事です。セキュリティ対策は企業価値の保護にもつながるため、近年は特に重視される傾向があります。オフィスや従業員の安全を守るという観点から重要です。
工事名・実施事項 | 概要 |
---|---|
電話配線工事 | 代表電話や内線システムの構築に不可欠 |
LANケーブルの敷設 | 高速で安定したネットワーク環境を整えられる |
Wi-Fi設備の整備 | モバイル端末やフリーアドレス化に対応するための必須インフラ |
オフィス内装工事の費用相場
オフィスの移転やリニューアルを検討する際に、気になるポイントのひとつが「内装工事にかかる費用」です。内装工事は物件の状態や工事範囲、デザイン性、設備要件などによって費用が大きく変動します。
以下では、オフィス全体の工事と部分的な内装工事の両面から、一般的な費用相場をご紹介します。
オフィス全体の内装工事費用
オフィス全体をリノベーション・新装する場合、物件の状態や広さによって費用は大きく異なりますが、一般的な相場は「1坪あたり30万円〜100万円程度」です。例えば100坪のオフィスの場合、約3,000万円〜1億円程度が目安となります。
物件のタイプ別の相場目安は以下の通りです。
物件タイプ | 坪単価の目安 | 特徴 |
---|---|---|
スケルトン物件 | 50〜120万円/坪 | 内装・設備が一切ない状態。自由な設計が可能だが、工事費用は高くなる傾向 |
通常物件 | 30~80万円/坪 | 原状回復を終え、基本的な天井・壁・床・照明・空調などが整っているため、スケルトン物件よりは工事費用を抑えられる |
居抜き物件 | 15〜60万円/坪 | 既存の内装や設備を一部活用できるため、比較的低コストで済む |
セットアップオフィス | 5〜20万円/坪 | 初期内装・家具付きで、最小限の改装のみで入居可能。工事費用は大幅に抑えられる |
部分的な内装工事費用
部分的な内装工事は、全面改装に比べてコストを抑えられます。費用の相場は一般的に1坪あたり30万円前後ですが、改装の規模や内容によって調整が可能です。
部分改装の代表的な例は以下の通りです。
- エントランス改装:来訪者様の印象を左右する「顔」の部分を刷新します
- 会議室の増設・改装:業務効率の向上や働き方の多様化に対応できます
- 執務スペースの改装(例:フリーアドレス制への変更):働き方改革や社員の利便性向上などを目的とします
部分改装は、事業活動への影響を最小限に抑えつつ、必要な箇所に限定して投資できるため、コストと機能性のバランスが取りやすい点が特徴です。特に予算の制約が厳しい企業や、既存オフィスを活かして働き方を見直したい企業に適しています。
貴社のオフィスにおける費用の詳細を知りたい方は、一度お問い合わせください。
オフィス内装工事の進め方
内装工事は段階ごとにやるべきことが明確であり、計画的に進めなければ予算オーバーやスケジュール遅延などのリスクが発生します。
以下では、オフィス内装工事をスムーズに進めるための6つのステップをご紹介します。
1. 工事の目的を明確にする
最初にすべきことは、「なぜオフィスを改装するのか」という目的の明確化です。目的が曖昧なまま工事を進めると、完成後に「思っていたものと違う」といったズレが生じやすくなります。
【目的を明確にするポイント】
- 現状の課題を把握する:従業員へのヒアリングやアンケート、チェックシートを使って、働き方や業務効率に関する課題を洗い出しましょう
- 理想のオフィス像を描く:他社のオフィス事例を参考にしながら、「こういう働き方を実現したい」「このような空間にしたい」といった将来のイメージを具体化していきます
- 専門業者に相談する:初期段階から内装業者と相談しながら進めることで、現実的な方向性を早い段階でつかむことができます
2. 内装工事業者を選定する
工事をスムーズに進める上で、信頼できる業者選びは非常に重要です。複数の業者から相見積もりを取り、内容や金額を比較検討しましょう。
【選定時のポイント】
業者選定時には、デザイン設計と施工を分けて依頼するか、一括で対応できる業者に依頼するかを検討します。スピード感や窓口を一本化できるという観点からは、デザインから施工まで一括で対応してくれる業者がおすすめです。
施工実績や過去の事例、担当者の対応力なども含めて総合的に評価しましょう。
3. デザイン設計を行う
業者が決まった後は、オフィスのデザイン設計に入ります。業者と打ち合わせを重ねながら、内装のコンセプトや雰囲気、レイアウト、必要な設備などを詰めていきます。
【設計で決める主な内容】
- オフィスのゾーニング(エントランス、執務室、会議室、休憩スペースなどの構成)
- 配色や素材、家具の選定
- フリーアドレス化や会議室の配置など、働き方に合わせた機能性の確保
最終的にはこれらを図面化し、完成イメージを具体化していきます
4.見積りと契約
デザイン設計が確定したら、次は正式な見積もりを取得し、工事契約を結びます。
【契約時の注意点】
見積もりの内訳が細かく記載されているかをチェックし、不明点は必ず事前に確認します。当初の目的や予算に合致しているかを再確認しましょう。
工事の内容や納期、アフターフォローの範囲なども契約書に明記しておくと安心です。
5. 内装工事のスケジュール設定と施工
契約後は、実際の工事スケジュールを設定し、施工に入ります。工程表をもとに、どの時期にどの工事を行うのかを明確にし、関係者と共有します。
【施工前にしておくべき準備】
- 社内への周知や工事に伴うレイアウト変更の調整
- 設備搬出入のスケジュール調整
- ビル管理会社や近隣テナントとの調整や申請
施工期間中は定期的に進捗確認を行い、予定通りに工事が進んでいるかをチェックします。
6.竣工・引き渡し
工事が完了したら、最後に竣工検査と引き渡しを行います。
【確認すべきポイント】
- 設計図や仕様書どおりに仕上がっているか
- 施工ミスや不具合、汚れなどがないか
- 設備の動作確認や安全面のチェック
必要に応じて修正工事や手直しの依頼を行い、最終確認を経て正式に引き渡しを受けます。
オフィス内装工事を依頼する業者の選び方
内装工事は、依頼する業者によって仕上がりの満足度やプロジェクトの進捗に大きな違いが生じます。
以下では、内装工事のパートナー選びで重視すべき4つのポイントを解説します。
施工実績
まず確認したい点が施工実績です。実績の「数」だけにとらわれるのではなく、内容の「質」に着目することが大切です。
実際の施工事例や写真を確認しながら、自社にとって「理想の完成形に近いかどうか」を判断しましょう。
【注目すべきポイント】
- 自社の希望する改装内容(レイアウト変更・執務エリアの刷新・会議室増設など)に近い事例を手掛けているか
- オフィスの規模感(坪数)や業種に合った施工経験があるか
- 自社のイメージやデザインテイストに近い実績があるか
法律知識の有無
オフィス内装工事には、建築基準法、消防法、労働安全衛生法など、さまざまな法令の遵守が求められます。これらに対する知識や対応力のない業者に依頼すると、後から是正工事が必要になったり、法的トラブルに発展したりするリスクがあります。
【チェックすべきポイント】
- 消防署やビル管理会社への申請手続きや調整・管理などを代理で対応してくれるか
- 設計時点で法的条件を考慮しているか
法律を理解した上で設計・施工を行える業者は、トラブル回避と品質確保の両面で信頼できます。
アフターサービスの有無
オフィス内装は、一度工事が終われば完了というものではありません。時間が経つ中で不具合が発生することもあり、また、レイアウト変更や機器増設といった対応が必要になることもあるため、適切なサポートを受けられるかどうかは非常に重要なポイントです。
【確認すべき項目】
- 引き渡し後の保証期間や対応範囲が明記されているか
- 定期点検やメンテナンス体制があるか
- トラブル時の対応スピードや窓口の明確さ
アフターサポートがしっかりしている業者であれば、安定的で長期的な運用が可能となります。
安心感のあるプロジェクト推進
業者の対応力やスケジュール管理能力といった基本的な要素も、忘れずに見極めたいポイントです。
【評価ポイント】
- スケジュールや納期の見通しが現実的で明確か
- 初回の相談からレスポンスが早く、丁寧な対応があるか
- 専任の担当者が付き、窓口が一本化されているか
特に、丁寧なコミュニケーションや的確な進行管理ができるかを慎重に見極めましょう。
【内装工事事例】オフィスがリニューアルするまで
「内装工事の内容や進め方は把握できたが、具体的な工事のイメージが湧かない」という方もいるかもしれません。
そこで以下では、イルミナが自社オフィスである“Design Studio”をリニューアルした事例をご紹介します。
「内装工事の内容や進め方は把握できたが、具体的な工事のイメージが湧かない」という方もいるかもしれません。
そこで以下では、イルミナが自社オフィスである“Design Studio”をリニューアルした事例をご紹介します。
Step 1:内装コンセプトの決定 〜イルミナらしさを形に〜
【課題と目的の明確化】
イルミナが抱えていた最大の課題は、自社の世界観を表現できる場がなかったこと。単なる執務空間ではなく、「イルミナらしさ」を体現し、人々の心にあかりを灯す場所を実現したいと考えていました。
その中で特に求められたのは、「高いデザイン性と機能性の両立」です。情報共有がしやすく、生産性も高められ、社内外問わず人が「集まりたくなるオフィス」を目指しました。
【内装コンセプトの設定 「Ode illumina」】
Design Studioの内装コンセプトは「Ode illumina」と名付けられました。“Ode”は感情や想いを人々に伝える「詩」という意味であり、イルミナの企業理念と、「働くこと」の未来を照らす空間を目指した、象徴的なコンセプトを設定しました。
Step 2:デザイン設計 〜空間の構成と演出〜
【ゾーニング・レイアウト】
Design Studioでは「集まりたくなるオフィス」を目指し、空間の約半分をオープンなワークエリアに。バーカウンターやセンターテーブルなどを配置し、誰もが気軽に立ち寄れる設計にしました。
- バーカウンター:来訪者様も気軽に利用可能な開放空間に
- ラウンドソファ:全体と調和する色味でリラックス感を演出


【インテリアイメージの策定】
コンセプトに基づき、以下のようなこだわりが詰まったデザインが施されました。
- シンボリックな照明を空間の中央に配置:オフィスの“光”を象徴するデザインとして外からも目を引く演出に
- スケルトン天井×吸音パネル:開放感を確保しつつ、音の反響を抑える機能性も実現
- 大容量の壁面収納×作業カウンター:機能性とデザイン性を両立した設計に
Step 3:内装工事 〜空間が“かたち”になる〜
【塗装工事】
壁面は塗装仕上げで、スケルトン天井と組み合わせて開放感を演出。廃材が出ず、補修もしやすい点から環境面でもメリットがあります。
【電気・照明・通信工事】
電源・照明・LANといった基本インフラを整備。スケルトン天井に配線を収めるため、見た目と機能の両立には細やかな工夫が必要でした。
【床工事】
オープンワークエリアは温かみのある木目シート仕上げに、ワーキングスペースはタイルカーペットで集中しやすい環境にしました。空間の用途ごとに素材を使い分け、雰囲気と機能性を両立しています。
【造作工事・家具設置】
最大の特徴であるルーバー付きのバーカウンターは天井から吊り下げで設置しました。
バーカウンターとラウンドソファはイルミナデザイナーのオリジナル設計で、柔らかい配色と素材感にこだわりがみられます。
【家具搬入】
全席昇降デスクで健康的な働き方をサポートしているほか、本棚はセミオーダーで壁いっぱいに設置し、収納と見せ方を両立しています。
また、オープンスペースのチェアはユーズドファニチャーを活用。サステナビリティを意識しながらも、内装イメージにマッチするアイテムを選定しました。
【装飾調整】
最終仕上げとして、外からも視認できるサイン看板を窓に設置。これにより、宣伝効果が期待できます。
植栽(フェイクグリーン)は、イルミナのデザイナーと施工担当がDIYで設置。細部まで“手作り感”にこだわりました。
最後に、「イルミナ」の社名の由来である「illuminate」を象徴した照明を吊るし、『Design Studio』が完成しました。
上記の事例のように、オフィス内装工事は単なる「空間づくり」ではなく、働き方や企業文化を形にするプロセスです。ご紹介した工事の進め方や業者の選び方、事例などを参考に、働きやすく快適なオフィスを作り上げていきましょう。
内装工事を検討している方はぜひ一度イルミナにご相談ください。
また、以下資料では、内装工事を通じて実現したいオフィスデザインのアイデアをまとめています。ご関心のある方はぜひご覧ください。