小規模オフィスや働き方の多様化により、「オフィスが使いづらい」「集中できない」「コミュニケーションが取りづらい」といった課題を感じていないでしょうか。
こうした課題を解決する手法の一つが「オフィスゾーニング」です。しかし、単に空間を区分するだけでは、期待した効果は得られません。本記事では、オフィスゾーニングの基本から失敗しない進め方、具体的な事例までを解説します。
オフィスゾーニングとは?重要性と基本知識
「オフィスゾーニング」と「オフィスレイアウト」は混同されがちですが、それぞれ定義や役割が異なります。
オフィスゾーニングの定義と、オフィスレイアウトとの違いについて解説します。
ゾーニングの定義
オフィスゾーニングとは、オフィス空間を用途や働き方に応じて区分し、それぞれの機能に最適な環境を設計する考え方です。
例えば、集中して作業を行うエリア、チームでコミュニケーションを取るエリア、リフレッシュするエリアなどを明確に分けることで、空間の役割が整理されます。その結果、業務効率の向上やコミュニケーションの活性化といった効果が期待できます。
レイアウトとの違い
オフィスゾーニングと混同されやすい概念に「オフィスレイアウト」がありますが、両者の役割には違いがあります。
ゾーニングは「空間の構造を決める工程」であり、どのような機能を持つエリアが必要かを整理するフェーズです。一方で、レイアウトは「家具や設備の配置を決める工程」であり、ゾーニングで決めた構造を具体化する段階です。
この順序を誤り、いきなりレイアウトから検討してしまうと、空間の目的が曖昧になり、結果として使いにくいオフィスになってしまいます。
オフィスレイアウトについては以下記事で詳しく解説しています。
▼【狭いオフィスの改善策】レイアウトやデザインの工夫アイデアをご紹介
オフィスゾーニングの方法【失敗しない進め方】
オフィスゾーニングで失敗しないためには、以下の点を押さえながら進めることが重要です。
①目的・課題を明確にする
オフィスゾーニングは「空間の区切り方」ではなく、課題解決を目的とした設計手法です。そのため、最初に「何のためにオフィスを改善するのか」という目的を整理する必要があります。
具体的な目的としては、コミュニケーション不足の解消、生産性・集中力の向上、採用力・ブランディングの強化、情報漏洩リスクの低減・アクセス管理の強化(セキュリティ)などが挙げられます。
また、セキュリティの観点も重要です。来客動線と執務エリアが混在していたり、誰でも入れる状態になっていたりすると、デザイン性の高いオフィスでもリスクが発生します。
これらの目的や課題を明確にすることが、ゾーニング設計の出発点です。
②業務・働き方を整理する
次に、社員の業務や行動を分解し、「行動単位」で整理します。
例えば、以下のような行動単位に分類できます。
- 集中する(個人作業・思考)
- 会議する(対面・オンライン)
- 共同作業する
- 雑談・偶発的コミュニケーション
- 電話・オンライン対応
- 来客対応
重要なのは、「部署」単位ではなく、あくまでも行動単位で捉えることです。
これにより、実際の働き方に即したゾーニング設計が可能になります。
③必要なゾーン(空間)を定義する
行動分析の結果をもとに必要なエリアを洗い出し、機能ごとにゾーンを整理します。
代表的なゾーン例としては以下があります。
- 集中エリア(静音・個人作業)
- コラボレーションエリア(議論・共同作業)
- 会議エリア(大小会議室)
- カジュアルコミュニケーションエリア(雑談・休憩)
- 電話・WEB会議ブース
- 来客エリア(受付・応接)
機能が曖昧な空間は、どの用途でも中途半端になりやすいため、機能ごとに明確に分けることがポイントです。
④面積配分を決定する
各ゾーンにどの程度のスペースを割り当てるかを決定します。
ここでは優先順位を明確にすることが重要です。例えば、集中作業が多い企業では集中エリアを広くする、会議が多い企業では会議室を増やす、といった対応が考えられます。
すべてを均等に配置するのではなく、「限られた面積の中で何を重視するか」を判断・決定することが重要です。
⑤配置(ゾーニング設計)を行う
ゾーンと面積配分が決まった後、配置設計に進みます。その際、人の動線を意識しながら配置を検討し、無駄な移動やストレスを減らす設計を徹底するようにします。
例えば、集中エリアの隣に雑談スペースを置くと騒音問題が発生しやすくなります。また会議の多い企業で会議室が遠い位置にあると、移動時間が積み重なって生産性の低下につながります。ゾーニングとは単なる「区分け」ではなく、人の動きまで含めた「空間設計」であるという点を意識することが重要です。
⑥運用ルールを設計する
どれだけ優れたゾーニング設計を行っても、使い方が曖昧だと機能しません。
例えば、集中エリアでは会話禁止とする、会議エリアでは会議時間の上限を設ける、フリーアドレスでは席の固定化を禁止するなど、運用ルールの設計が不可欠です。
ゾーニングは「設計+運用」で初めて成立する仕組みである、という点を押さえておきましょう。
オフィスゾーニングの事例3選|レイアウトと工夫を解説
以下では、各企業の目的・課題に応じたゾーニングの事例を3つご紹介します。
事例①:採用・ブランディングを高めるゾーニング
採用・ブランディングを高めるゾーニングの事例として、株式会社Sales Marker様のオフィスが挙げられます。


本事例では、エントランスや来客エリアにおいて企業のブランドイメージを体現するデザインを取り入れ、来訪者様や求職者に対して企業の価値観や世界観が伝わる空間設計となっています。また、来客動線と執務エリアを適切に分離することで、開放感と業務環境の両立が図られています。
このように、ゾーニングを通じて「見せるエリア」と「働くエリア」を意図的に設計することで、企業イメージの向上と働きやすさの両立が実現可能です。
このゾーニングにより、以下の効果が期待できます。
- 企業ブランドの訴求力向上
- 来訪者様・求職者への印象向上
- 採用力の強化
事例②:セキュリティ・リスク管理を強化するゾーニング
セキュリティレベルに応じたゾーニングの事例として、HATARABAグループ(株式会社HATARABA,株式会社イルミナ,株式会社360pict)オフィスが挙げられます。

事例:HATARABAグループ(株式会社HATARABA,株式会社イルミナ,株式会社360pict)
本事例では、来訪者様が利用するエントランスおよび会議室エリアをセキュリティフリーとし、スムーズな来客対応が可能な動線を確保しています。一方で、執務エリアはセキュリティ付きドアを通過しなければ入室できない構造とすることで、従業員専用エリアとして明確に分離されています。
このように「誰がどこまでアクセスできるか」を基準にゾーニングを設計することで、外部からの不要な立ち入りを防ぎ、情報管理と業務環境の最適化を両立しています。
このゾーニングにより、以下の効果が期待できます。
- 情報漏洩リスクの低減
- セキュリティレベルの明確化
- 業務に集中できる環境の確保
事例③:集中と交流を分離したゾーニング
集中と交流のメリハリをつけたゾーニングの事例として、kiCk Inc.様のオフィスが挙げられます。


事例:kiCk Inc. 様
本事例では、オープンなコミュニケーションエリアを中心に据えつつ、業務に集中できる執務エリアを適切に分離することで、働き方に応じた空間の使い分けが可能な設計となっています。
特に特徴的なのは、デザイン性の高いオープンスペースです。カジュアルな雰囲気の中で社員同士が自然に会話できる環境が整えられており、偶発的なコミュニケーションやアイデア創出を促進しています。一方で、集中作業に適したエリアも確保されているため、業務内容に応じて最適な環境を選択することが可能です。
このようなゾーニングにより、以下の効果が実現されています。
- コミュニケーションの活性化
- 業務への集中力向上
- 働き方の柔軟性向上
オフィスゾーニングを成功させるためのポイント
ここまで紹介した事例から、オフィスゾーニングを成功させるための共通ポイントを整理しました。
目的・働き方を起点に設計していること
すべての事例に共通しているのは、「空間」ではなく「働き方」を起点に設計されている点です。
採用強化を目的とする場合はブランド性や開放感のある空間設計、生産性向上を目的とする場合は集中と協働を切り分けたゾーニングなど、目的によって設計は大きく変わります。
目的に応じてゾーニングを行うことで、それぞれの成果を最大化できます。
セキュリティレベルを考慮していること
用途だけでなく、「誰がどこまでアクセスできるか」というセキュリティの観点でゾーニング設計がなされている点も見逃せません。来訪者様エリアと執務エリアを適切に分離し、アクセス制御を設けることで、情報漏洩リスクを低減しながら安全な業務環境を確保しています。
オフィスは「働く場」であると同時に、情報資産を守る場でもあり、ゾーニングはその両立を実現するための重要な手段であるといえます。
複数の働き方を選択できる設計にしていること
オフィスでは、「一人で集中して資料を作る」「対面で議論する」「オンライン会議に参加する」といったように、一日の中で複数の業務が行われています。こうしたさまざまな業務に合わせ、フリーアドレスや集中ブース、多目的スペースなど、用途に応じて場所を選べる設計となっていることがポイントです。業務内容に最適な環境を選択できるようにすることで、生産性の向上につながります。
空間を分けすぎず、適度につながりを持たせていること
ゾーニングというと「空間を分けること」に意識が向きがちですが、成功事例では単にゾーンを分断するのではなく、視線や動線を通じて空間同士が緩やかにつながる設計が採用されています。
これにより「集中環境を確保しながらコミュニケーションも阻害しない」といった、空間・機能の効果的な分離を実現しています。
ゾーニングの本質は「分断」ではなく、機能分離とつながりの両立にあるという点を意識することが大切です。
空間設計と運用をセットで考えていること
ゾーニングは設計だけで完結するものではなく、運用の観点とセットで考えることも重要です。例えば運用に関するルールが設けられていないと、騒音問題の発生や特定の人によるスペースの占有などの問題が発生しやすくなります。
利用ルールや運用方法まで含めて設計することで、ゾーニングははじめて機能します。
オフィスゾーニングはなぜ難しい?プロに相談すべき理由
オフィスゾーニングは一見シンプルに見えますが、実際には高度な専門性が求められる領域です。まず、要件整理の段階で「何を優先すべきか」を見極める必要があります。また、設計・施工・設備・法規といった複数の要素が複雑に絡むため、部分最適ではなく全体最適の視点が不可欠です。
ゾーニングは単なる空間の区分ではなく、動線設計や働き方、セキュリティレベルの設計まで含めて検討する必要もあります。
特に内装設計では、建築基準法や消防法などの法規対応が重要であり、適切に対応しなければ安全性や資産価値に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、オフィスづくりは設計だけで完結するものではありません。レイアウト設計、施工、設備、運用までを一貫して検討する必要があります。
イルミナでは、課題整理から設計・施工・プロジェクトマネジメントまでをワンストップで支援しており、企業ごとの働き方に最適化されたオフィスづくりを実現しています。
より具体的な事例や設計ポイントを知りたい方へ
本記事で紹介したゾーニングの考え方を実際のオフィスに落とし込むには、具体的な事例を参考にすることが重要です。
イルミナでは、実際に手がけたオフィスデザインや内装工事の事例を、写真付きでまとめた資料を用意しています。
ゾーニングの工夫やレイアウトの考え方をより具体的にイメージしたい方は、ぜひ参考にしてください。
イルミナコーポレートブック vol.3 【事例集】

