オフィス空間のデザインにおいて、トイレは他の場所に比べ重視されにくいのが実情です。しかし、リフレッシュしたり身だしなみを整えたりする場でもあり、トイレの清潔感や使いやすさに配慮することは社員のモチベーションという観点からも非常に重要です。
本記事では、オフィスのトイレ設計時に確認すべきポイントや、デザインの注意点、実際の事例をご紹介します。
オフィスのトイレは従業員満足度を左右する重要な空間!

オフィスのトイレは、従業員にとって単に生理現象を処理する場所ではなく、仕事の合間に一息ついたり、気分転換を図ったりするプライベートな空間としての役割も担っています。快適で使い心地の良いトイレを設計・整備することで、従業員の満足度や働くモチベーションの向上が期待できます。
実際に、2022年に実施された調査※によると、「オフィスのトイレが充実すると仕事の効率UPに影響するか」という質問に対し、71%の人が「影響する」と回答しています。また、オフィス環境で最も重視するものとして、「空調」や「行き届いた清掃」などを抑え、「トイレ」が第一位にランクインしています。
このことからも、オフィスの快適性においてトイレの環境は極めて重要であることがわかります。
※出典:オフィストイレの意識調査 2022(LIXIL)
オフィスのトイレ設計前に確認すべき基本のポイント
オフィスのトイレを設計する際には、事前に以下の6つの点を確認しておくことが大切です。
①法律に則ったトイレの設置数
労働安全衛生法の事務所衛生基準規則の17条において、オフィスのトイレは最低限設置しなければならない個数が定められています。
具体的な個数は以下の通りです。
【男性用大便所】
- 同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上(例:男性労働者数が80人なら2個以上、130人なら3個以上)
【男性用小便所】
- 同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上(例:男性労働者数が80人なら3個以上、130人なら5個以上)
【女性用便所】
- 同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上
(例:女性労働者数が30人なら2個以上、50人なら3個以上)
また特例として、同時に就業する労働者数が10人以下の場合、男性用と女性用に区別しない独立個室型の便所を設けることで足りるとされています。
参考:事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和三年厚生労働省令第百八十八号)第十七条
ただし、上記は最低限の規定であるため、社員数・男女比・想定される来客数・多目的トイレの設置の有無などの観点から、設置数は柔軟に変化させる必要があります。
設置数が少ないと不便を感じることがあるため、ある程度余裕を持たせた方が良いでしょう。
②心地よいトイレのサイズ感・ドアの選定
快適なトイレ環境を提供するためには、設置数だけでなくサイズ感も重要です。
最低限確保しておきたいサイズの目安は以下の通りです。
【一般的な洋式トイレの個室の寸法】
幅:70~80cm程度(便器:横幅約40cm+左右の幅15cm×2)
奥行き:120~140cm程度(便器:約80cm+便座の先からドアまで40cm~)

また、個室トイレのドアの開き方もスペースの確保に影響するため重要です。内開きの扉は個室内部の有効スペースを狭くするため、外開きにする・扉が横にスライドする形式にするといった配慮が求められます。
③トイレの主な種類(タンクタイプ・タンクレスタイプ)

オフィスに導入できるトイレには大きく分けて「タンクタイプ」と「タンクレスタイプ」の2種類があります。
【タンクタイプ】
- 概要:便器後方のタンクに水をため、流す仕組み。一般的なタイプで設置実績が多い
- 特長:構造がシンプルで比較的安価。水道圧が低いビルでも安定して使える
- 適している場合:設置コストを抑えたい場合、中小規模のオフィス、古いビルで水圧に制約がある場合
【タンクレスタイプ】
- 概要:水道直結で水を流すシステム。タンクがないため見た目がすっきりとし、空間を広く見せられる
- 特長:デザイン性が高く、温水洗浄便座、防汚コート、自動洗浄など、最新機能を搭載されているケースが多い。連続使用にも強く、大規模オフィスでも安定的に使用可能
- 適している場合:オフィスのグレード感を高めたい場合、来客が多いオフィス
これらの特長を踏まえ、オフィスの規模や予算、求める機能に応じて最適な種類を選定しましょう。
④必要な電源容量と電気配線があるか確認
現代のオフィスのトイレでは、温水洗浄便座や自動水栓、人感センサー付き照明、ハンドドライヤーなど、多くの電気設備が使用されています。これらの設備を稼働させるためには、十分な電源容量と適切な電気配線が不可欠です。特に改修工事を行う場合、既存の電源容量が不足していたり、必要な場所にコンセントが設置されていなかったりするケースもあります。
設計段階で導入したい設備をリストアップし、電源工事や配線計画を事前に検討することが重要です。
⑤手洗いスペースもトイレ設計に重要
手洗いスペースは、トイレ全体の印象と利便性に関わる重要な要素です。
例えば、洗面台は利用者が並んでも窮屈に感じないよう、適切な数と間隔を確保することがポイントです。鏡は空間を広く見せる効果もあるため、壁面の大きさに合わせて設置すると良いでしょう。加えて、清潔感を高める照明やリラックス効果をもたらす観葉植物などを設置することで、利用者の印象が向上します。
⑥バリアフリートイレ・ジェンダーレストイレの設置
さまざまな働き方が広がり、多様性が重視される現代では、誰もが利用しやすいトイレ設計が求められています。
こうした時代の変化を踏まえ、車椅子利用者はもちろん、怪我をしている方や妊娠中の方など、さまざまな状況の人が利用しやすいようバリアフリートイレの導入も検討すると良いでしょう。
また、多様な働き方を推進する企業であれば、ジェンダーレストイレの導入も選択肢に入ります。ジェンダーレストイレは、性別に関係なく誰もが利用できるトイレです。個室の空き状況に応じて男女問わず利用できるため、トイレの混雑緩和につながるメリットもあります。
以上のように、トイレの設計においては法律や基本的な設備要件を押さえることが重要です。
快適性を高める!トイレ空間の設計・デザインの重要なポイント

清潔で使いやすく、誰にとっても安心できるトイレ空間を実現するためには、内装や設備選びの工夫が欠かせません。以下では、トイレ空間の快適性を高める設計・デザインのポイントを解説します。
①清潔感が出るデザインにする
トイレの印象を決める最大の要素は「清潔感」です。特にオフィスでは利用頻度が高いため、常に清潔に見えるデザインが求められます。
全体のカラートーンを統一し、すっきりとした印象を与えることがポイントであり、以下のようなデザイン例があります。
- 白やアイボリー、ライトグレーといった明るい色を壁や床の基調にすると、空間が広く明るく感じられ、衛生的な印象を与えられます
- 素材や仕上げも重要であり、艶のある仕上げは高級感を演出し、マットな質感は落ち着きをもたらします
②掃除しやすい床材・壁材を選ぶ
トイレを常に清潔に保つためには、日々のメンテナンスが欠かせません。そのため、床材や壁材には日々の掃除がしやすい素材を選ぶことがポイントです。
- 床材の例:汚れを拭き取りやすいビニールクロスや、消臭・調湿効果を備えた機能性クロスがおすすめです
床材の特徴や選び方は以下の記事で詳しく解説しています。
内部リンク:記事No.8「オフィスの床材・デザインの選び方を解説!床材の種類やOAフロアのトレンドも」
- 壁材の例:水やアンモニアに強いビニル床シートやタイルなど。特にセラミックタイルは耐久性・防汚性が高く、長期的に美観を保てます
壁材の種類や選び方の詳細は以下の記事をご覧ください。
内部リンク:記事No.9「壁紙でおしゃれなオフィスに変わる!種類と選び方、ワンランク上の壁紙術を伝授」
③ニオイや湿気を防ぐ換気・空調設備
トイレ空間の快適性を著しく損なう原因が、不快なニオイや湿気です。そのため、適切な換気設備の設置が欠かせません。
建築基準法によりトイレへの換気扇設置が義務付けられていますが、常に快適な状態を保つためには、部屋の広さに見合った十分な換気能力を持つ機種を選ぶことが重要です。
窓のないトイレでは、24時間換気システムを導入することで常に新鮮な空気を保つことが可能です。空調と連動させることで、湿気やカビの発生も防げます。
④プライバシーへの配慮・音漏れ対策
安心してトイレを使える環境を整えるためには、プライバシーへの配慮も不可欠です。特に、以下のように視覚と音を考慮することが求められます。
- 視覚:執務スペースからトイレの入口が見えないようレイアウトを工夫します。また、トイレブースのパネルを床から天井までの高さに設定し、隙間をなくします
- 音:壁には遮音材や吸音材を使用することがおすすめです。流水音を流す擬音装置を設置することで、心理的な安心感を高められます
⑤照明の明るさを場所によって調整する
トイレ全体を同じ明るさにするのではなく、エリアや用途に応じた照明設計にすることで快適性を高められます。以下のような工夫をすると良いでしょう。
- ベース照明:清潔感を演出する昼白色のダウンライトで空間全体を照らします
- 洗面スペース:顔に影が出ないよう鏡の両側にブラケットライトを配置します。演色性の高い照明であれば自然な肌色を再現でき、化粧直しや身だしなみのチェックに最適です
- 個室内:やや照度を落とすことで、リラックスできる雰囲気を演出できます
⑥洗面台や利便性が向上する設備の充実
従業員の満足度を高めるためには、洗面スペースの機能性や利便性を考えた設備にすることが大切です。

- 洗面台:広めのカウンター、大きな鏡、小物やスマホを置くための棚を設置すると良いでしょう。マウスウォッシュのようなアメニティの設置もおすすめです。
※デザインにもこだわる場合は、カウンターには人工大理石や木材、洗面ボウルには陶器・磁器・ガラスなど、素材選びによって個性を表現できます。
- その他設備:トイレ内の荷物置き場、フックなど。女性トイレであれば生理用品の設置も喜ばれます。小さな配慮が従業員の快適さにつながります。
⑦快適な便座に考慮する
便座の快適性も、トイレ全体の満足度に関わる重要な要素です。
多くのオフィスで標準装備となっている温水洗浄機能はもちろんのこと、冬場に冷たさを感じさせない暖房便座機能も、従業員の満足度を高める上で欠かせません。衛生面を重視するなら、使用前後にノズルを自動洗浄する機能や、便座や便器内を除菌する機能を備えた製品を選ぶと良いでしょう。
快適なトイレを維持するにはメンテナンスも重要
どれだけデザインや設備にこだわっても、日常の維持管理が行き届いていなければ快適なトイレ環境は保てません。以下の点に考慮して、トイレを定期的にメンテナンスする体制を整えておくことが大切です。
- 定期清掃のスケジュールを明確に
清掃業者による定期清掃を週単位・月単位で実施し、便器や床、壁などを徹底的にクリーニングすることが重要です。加えて日常的に巡回し、使用状況に応じて随時清掃することで、常に清潔感を保てます。
- 消耗品の在庫管理と補充ルールを徹底
トイレットペーパーやハンドソープ、ペーパータオルといった消耗品が切れてしまうと、利用者の不満が高まります。在庫管理を担当するスタッフを明確化し、定期的に補充状況をチェックする仕組みを導入しましょう。
特に利用者の多いオフィスでは、こまめに巡回・点検する、補充のタイミングを1日複数回設定するなど、補充ルールを徹底することが大切です。
- 設備の不具合を早期に発見・修繕
水漏れや排水不良は放置すると大きなトラブルや悪臭の原因になります。
温水洗浄便座や自動水栓などの電気設備も、故障すると大きな不便につながります。そのため、定期点検を欠かさず行い、水漏れや設備の不具合などを早期に発見し、迅速に修繕できる体制を整えておきましょう。
参考にしたい!清潔で機能的なオフィスのトイレ事例
イルミナは、メーカー系自動車整備会社様のオフィス内トイレの新設工事を手掛けました。

木目調を基調とした内装は、清潔かつ温かみのある落ち着いた空間を演出しており、シンプルでありながら心地よい雰囲気のトイレ空間を実現しています。
広めの洗面カウンターを設けることで、来訪者様や社員がゆとりを感じられるデザインとなっているほか、大きな鏡により空間が視覚的に広がってみえます。
小物入れやカウンターも設置することで化粧直しや身だしなみチェックもしやすくなっています。また、出入口からトイレ内部の様子が見えにくいよう配置が工夫されており、使用者の心理的安心感が配慮されている点もポイントです。
このように、トイレの快適性や利便性を意識した設計は、実際の施工事例でも高く評価されています。
まとめ
オフィスのトイレは、単なる設備ではなく、社員の快適性や働きやすさに直結する重要な空間です。清潔感やメンテナンス性、換気、プライバシー、照明といったポイントを意識した設計・デザインを行うことで、社員満足度や企業イメージの向上につながります。
快適なトイレ空間を実現するためには、専門のノウハウを持つ業者と相談しながら設計することがおすすめです。
イルミナは前章でご紹介したようなオフィスのトイレ工事の実績があることはもちろん、トイレだけでなくオフィス全体のデザイン・改装工事も一貫して対応できます。オフィスのコンセプトや使い方、働き方などをヒアリングした上で、理想のオフィス空間をお客様とともに見つけていきます。
オフィスのトイレの設計・改装をご検討の方は下記よりお問い合わせください。


